たまには人間を休みたくなることもある。
ズルズルと、次第に座椅子からはみ出していって、終いには床に転がっていた。
好きな体勢になれるよう、多段階のリクライニング機能がついているものではあるが、そのどれにもフィットしようがない気分というのもある。
穏やかな昼下がりだ。
そういえば、皿にベビーリーフを乗せるところまでして、放ったらかしになっていた。
今となっては、人間用に誂えられたドレッシングなんか、かけてられるかと思う。
半身を起こし、ローテーブル上に手を伸ばす。
……
まだ若いそれぞれの葉には、ぎっちりと味がつまっていて、種類ごとに個性がかなりはっきりしている。
……ブチッブチッ!ブチッ!……
いつもはドレッシングの味に夢中で聞こえない、葉脈の千切れる音が、今は聞こえる。
リクガメには、普段からはっきりと聞こえているのだろう。
……毎日もりもり一生懸命なんだ……
冷たい床の上でリクガメごっこをしている、
人間の体の輪郭が、痛みによって浮かび上がってくる。あちこちの骨が、ミシミシいい始める。
観念して、座椅子を90度より少しだけ倒し、座り直した。
皿の上のベビーリーフにイタリアンドレッシングをかけ、箸を持つ。
……ムシャムシャムシャ……
ベビーリーフのサラダを食べるときの音がした。ちょっと苦い。