ネットでサイゼのメニューを見てたら、どうやら〈ブロッコリーのくたくた〉っていうのが出てるらしい。
”くたくたのブロッコリー”ではなく、”ブロッコリーのくたくた”。
”くたくた”は、ここでは単にブロッコリーを形容するための言葉ではなく、確固とした料理名であるらしい。
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というわけで先日、〈ブロッコリーのくたくた〉目的でサイゼに行ってきました。
以下、合わせて食べたメニューの記録と、〈ブロッコリーのくたくた〉のエッセイです。
目次
頼んだメニュー(くたくた以外)
いわずとしれた、サイゼの100円ワイン。
赤にする率の方が多いけど、今回はムール貝を頼むので白で。
この貝の上に乗っている、刻み野菜みたいなやつが何気にお気に入り。
シャキシャキしておいしい。
シンプルなマルゲリータに比べて、チーズが更においしいやつ。
4等分にしたのを、2つ折りにしてガブッと食べると、一口当たりに感じられるチーズがたっぷりになって、贅沢感が増す。
くたくたな私は〈ブロッコリーのくたくた〉を食べにサイゼに行った。~食のエッセイ~
ピンボケなのか、ブロッコリー自体が元々ぼやけていたのか。
その日は特に理由もわからないまま疲れていた。ただ人やモノにぶつからないようにってことだけ考えながら、街の喧騒の中を漂っているような感じで、そう、ちょうどこのブロッコリーと同じように、私自身の体の輪郭も曖昧になっているようだった。
ふらふらとした足取りのまま、私はサイゼへ向かった。
〈ブロッコリーのくたくた〉ってメニューが出ていることは知っていた。
とりあえずそれを食べようと思った。
ブロッコリーは、茎に程よい噛み応えが残る程度に湯がくと、緑色が鮮やかに冴えてきれいなものだ。
だけどこのブロッコリーは、あきらかにそのタイミングを超えて煮込まれ続けている。
どよーんと色褪せた緑色だ。
花蕾をポロポロ落としながら、力なく皿の中で互いにもたれ合っているその有様は、商品名通り、いかにも”くたくた”している。
……そうだ。
私はこれを食べにきたのDA。
なんて消化に良さそうな食べ物なんだろう。
気が滅入っているときは、陰鬱な音楽にどっぷり浸る方がむしろ癒されるのと同じなんだ。
くたくたなときは、くたくたなものを食べる方がいい。
私はすっかり〈ブロッコリーのくたくた〉が気に入ってしまって、口の中で小さく”くたくたくたくた”と呟いた。
濁音がとれただけで、ずいぶんもの柔らかな響きになるものだ。
”ぐだぐだ”っていうと、なし崩し的に全てがダメになり、もはや再起不能、って感じがするけれど、”くたくた”の方には、救いがあるような気がする。
くたくたに煮崩れる寸前まで煮込んだブロッコリー。
くたくたに着崩れる寸前まで着古したセーター。
くたくたになって、毛玉ができても可愛がり続けているぬいぐるみ。
”くたくた”には多分、優しさがある。
元気がなかったわりに、最終的にいろいろと頼んで全部ぺろっと食べてしまったのは、多分〈ブロッコリーのくたくた〉のおかげだろう。
くたくたなりに辛うじて形をとどめていたブロッコリーを完全に消化する頃、ようやく元気になってきた私は、私自身の輪郭の確かさを取り戻しつつあるようだった。
最後まで読んでくださってありがとうございました。
今日も一日、元気もりもりブロッコリー!